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ハイテク一発屋たち

西海岸には今でも、アメリカン・ドリームを追い求める男たちが群がっています。

コンピューターやソフトの新技術を開発して億万長者になろうという、ハイテクの"一発屋"たちです。

技術があってもカネのない"夢見る"男たち・・・。

その男たちに金の卵を産ませようと、虎視たんたんたるベンチャー投資家たち。

当然投資家が幅をきかしています。

サンフランシスコ金融街のど真ん中に本社を持つ「パシフィック・テクノロジー・ベンチャー・ファンド」(PTVF)の会長も、そんな投資家の1人。

設立2年にもならないのに、大口投資したハイテク会社はすでに16社。

地域も西海岸、日本、東南アジアと国際的広がりを見せています。

「金はつぎ込めばいいというもんじゃない。そのあとのアフターケアがモノを言う。

そう、私の場合、毎週5000マイルくらいかな、飛行機に乗っているのは。

1社あたり月1回は事業の健康診断に回らなきゃならないからね。」

・・・彼にとって、ハイテクのヤング事業家たちは、大切な"金のなる木"なのです。

業績なければ社長もクビ

その"健康診断"に同行した記者がいます。

社長と共に最初に立ち寄ったのは、新興ビル街の一角にオフィスを持つマイコン教育プログラム会社「ノウハウINC」。

同社は、PTVF社が1年半前に出資して生まれたコンピューター・ソフト教育の専門会社。

まだ専任教官は六人しかいないミニ企業ですが、大手銀行や企業から社員教習の依頼が殺到して、まずまずのスタートです。

だが、ノウハウ社の面々、いつも神経をピリピリさせています。

業績が伸びなかったり、手抜かりがあると、即座にクビをすげ替えられてしまうからです。

その人事決定権は、すべて投資家の手中にあります。

社長の後に続いて重役室に入ると、経理、営業、セールス担当の各副社長が顔をそろえています。

なのに、肝心の社長がいません。

「実は、期待通りの業績を上げないんで、最近、社長にやめてもらいました。

今、私が会長にすわって後継社長を養成中なんですよ」

創造への激しい闘志

投資した会社がすべて当たるわけではありません。

急成長したものの途中で息切れしたり、倒産する会社も少なくないそうです。

そんな時、投資家の"目"が問われます。

2か月後のこと。

PTVF社に"異変"が起こりました。

同じ記者が再取材に戻ってみると、あの社長自身がポストを追われていたのです。

後がま社長には、だれあろう会長夫人。

夫人はそれまで、ロサンゼルスで社員400人のコンピューター会社を経営していた立志伝中の女傑。

「ロスの会社は、もうあれでいい。今度はPTVFを立て直さなきゃ」と、顔に似合わぬ闘志をむき出しにしていたそうです。

ベンチャー資本家を「バルチャー(猛きん類)」と揶揄する人もいます。

でも、彼らの本当の関心は、将来性ある未熟会社を発掘し、育て上げるプロセスにあるといってもいいでしょう。

既製品に磨きをかけるよりは新しいものをつくり出す・・・。

そこに生きがいを見いだすたくましい資本家たちもまた、創造性に富むアメリカのエネルギーなのです。

コンピューター・キッズ

アメリカは「早熟社会」です。

それを象徴するように、ハイテクの街に、コンピューター・キッズが育っています。

文字通り、パソコンのソフト業界に殴り込みをかけるこどもたちです。

実際、シリコンバレーに住み込んで、こどもたちのさまざまなうわさを耳にしました。

サンフランシスコ市立講堂で開かれた「第9回西海岸コンピューター・フェア」。

土、日を含め4日間におよぶ大出品展の会場は、3フロアに分かれ、連日1万人以上の見学者でごった返していました。

当然のことながら「IBM」「アップル」のような大手メーカーが主役。

しかし、3日目の土曜日、1階の片隅に小さなショップを出している少年がいました。

シリコンバレーの南端サンノゼからやってきたという中学生です。

「ウィークデーは、学校があるもんだから」と言う少年の横に、父親が付き添っていました。

目の前に積み上げられたビデオ・ゲームのカセットには、父子の名をとった会社名がプリントされています。

彼は中学生にして、ソフト開発会社のレッキとした共同経営者なのです。

日を改めて、少年の会社を訪れました。

会社は、自宅の20畳ほどのリビングルームと少年の勉強部屋。

「ソフト商品はアイデアが勝負。アイデアは、窮屈なビルにオフィスを構えても出てくるもんじゃないし・・・」と悟っていました。

自作ゲーム、日英からも引き合い

仕事場には、IBMのパソコン4台が並べられ、「宇宙の悪夢」「フォークランド合戦」といった自作ゲームのシーンがスクリーンに映し出されていました。

この2つの作品はすでに商品化されています。

アメリカ国内だけでなく、英、西独、オーストラリア、日本などからも引き合いがきているといいます。

値段は、1つ32ドル50セント。

83年3月に会社を設立して以来の売り上げについては口をつぐみましたが、順調のようです。

その証拠に、父親は最近、それまでプログラム・マネジャーをしていた会社を辞めてしまったそうです。

少年は、共同経営者になってからは、毎日最低4時間はコンピューターに向かっているそうです。

もちろん学校の宿題もおろそかにはできません。

それが、ローティーンのあるべき姿かどうかはともかく、1日の大半を自宅の机ですごしていることになります。

記者が訪れた時、少年は「ジャングル・マッドネス」という4作目のゲーム製作に夢中だったそうです。

話しっぷりといい、パソコンの操作ぶりといい、こどもらしからぬ落ち着き・・・。

よほどの天才でないかぎり、こんな大人顔負けの作品を作れないだろう・・・。

そう思いながら、彼の成績表を見せてもらったそうです。

これが意外。

理科、算数も含めてほとんど「A」ではなく「B」だったそうです。

非凡な"ひらめき"は、学校の成績とはまた別ものらしいです。

鉄は熱いうちに打て

同じサンノゼ市に、年収10万ドルを超すソフトウェア会社を個人経営する少年(17)がいました。

サンタクララ大学商学部1年に在籍していましたが、「ビジネス8時間、大学5時間」と、1日の活動は学業より仕事優先です。

彼は「正直いって、商売の方がやりがいがあります」と言い切ります。

ほかにも、記者は1人の高校生、2人の大学生に会ったそうです。

いずれも自宅を事務所兼用にした会社経営者たち。

神出鬼没の彼らの実態はつかみにくいそうです。

でも、その数は西海岸だけでも数百人に達するといわれています。

日本でも、ゲームのとりこになっているこどもは多いですよね。

でも、アメリカのコンピューター・キッズは、プレーするのではなく、その製作に熱を上げるのです。

3か月たって、記者は再び少年の家を訪れました。

そのとき一家はまもなく5か月間の世界旅行に出かける準備に追われていたそうです。

旅行中は、もちろん学校は休み。

「気にしませんよ。むしろ世界を自分の目で見て各国の人々と語り合う。その方が、よほど生きた勉強になります」と父親もいたって大らか・・・。

パソコン持参の旅。

アフリカのジャングルや南海を見ながら、新しいソフトを考えるのだといったそうです。

"鉄は熱いうちに打て"というわけですね。

アメリカのベンチャーは、こどものうちに始まっているのです。

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